公的研究費等の不正使用防止への対応
1. はじめに
国立大学における公的研究費等の原資の大部分は貴重な国民の税金で成り立っているため,公的研究費等の不正使用は,国民の信頼を大きく損なうこととなります。このため,公的研究費等の管理については国立大学法人の責任において適正に行わなければなりません。
本学では「研究機関における公的研究費の管理?監査のガイドライン(実施基準)(平成19年2月15日文部科学大臣決定,令和3年2月1日改正)」を踏まえ,以下のとおり公的研究費等の適正な管理?運営体制を整備し,公的研究費等の不正使用防止に向けた取組を推進しています。
研究機関における公的研究費の管理?監査のガイドライン(実施基準)(令和3年2月1日改正) |
公的研究費等とは
教育?研究活動に使用する運営費交付金対象事業費,寄附金,共同研究費,受託研究費及び国又は国が所管する独立行政法人等から配分される競争的資金を中心とした公募型の資金など,本学で扱うすべての公的資金をいいます。
不正使用とは
関係法令等に違反した個人経理,他の用途への使用又は交付決定の内容やこれに付した条件に違反した使用,虚偽による架空請求?架空取引及び不適切と判断されるすべての行為をいいます。
構成員とは
役員規則(平成16年島大規則第4号)第2条,職員就業規則(平成16年島大規則第7号)第3条に規定する本学の役員,職員及び資金配分機関から競争的研究費等の配分を受けた学生をいいます。
構成員等とは
構成員,名誉教授称号授与規則(平成16年島大規則第86号)により名誉教授の称号を授与された者,本学と雇用関係がなく部局で定める要項等で客員研究員?特別研究員等の取扱いを受ける者,外部取引関係者及び共同研究を行う民間企業からの出向者をいいます。
不正使用防止教育とは
不正を事前に防止するために,本学が公的研究費等の運営?管理に関わる全ての構成員に対し,自身が取扱う公的研究費等の使用ルールやそれに伴う責任,自らのどのような行為が不正使用に当たるかなどを理解させることを目的として実施する教育をいいます。
啓発活動とは
不正使用を起こさせない組織風土を形成するために,本学が構成員全体に対し,不正使用防止に向けた意識の向上と浸透を図ることを目的として実施する諸活動全般をいいます。
2. 組織の責任体制
不正使用防止最高管理責任者
- 公的研究費等の運営?管理について最終責任を負う者として,学長を不正使用防止最高管理責任者(以下「最高管理責任者」という。)として定めています。
- 最高管理責任者は,公的研究費等の不正使用防止等のための基本方針(以下「基本方針」という。)及び基本方針に基づく行動規範(以下「行動規範」という。)を定め,学内外に公表するとともに,それらを実施するために必要な措置を講じることとしています。また,不正使用防止統括管理責任者及び不正使用防止推進責任者が責任を持って公的研究費等の運営?管理が行えるよう,適正にリーダーシップを発揮することとしています。
- 最高管理責任者は,基本方針?行動規範や具体的な不正防止対策の策定にあたっては,役員会において審議を主導するとともに,その実施状況や効果等について役員と議論を深めることとしています。
- 最高管理責任者は,自ら部局等に足を運んで不正防止に向けた取組みを促すなど,様々な啓発活動を定期的に行い,構成員の意識の向上と浸透を図ることとしています。
国立大学法人島根大学における公正な研究遂行のための基本方針 |
国立大学法人島根大学における公正な研究遂行のための行動規範 |
不正使用防止統括管理責任者
- 最高管理責任者を補佐し,公的研究費等の運営?管理について本学全体を統括する実質的な責任と権限を持つ者として不正使用防止統括管理責任者(以下「統括管理責任者」という。)を置き,学長が指名する理事をもって充てることとしています。
- 統括管理責任者は,基本方針に基づき,本学全体の具体的な不正防止対策に関して,不正使用防止計画(以下「防止計画」という。)を策定し,役員会の議を経て,学内外に公表することとしています。
- 統括管理責任者は,防止計画に基づき,不正使用防止教育及び啓発活動の具体的な実施計画(以下「実施計画」という。)を策定し,不正使用防止推進責任者に指示することとしています。
- 統括管理責任者は,構成員に対し公的研究費等の不正使用防止に関する意識調査及び使用ルール等に関する理解度調査を定期的に実施し,その結果について問題があると認められる場合は,防止計画を見直し必要な措置を講ずることとしています。
- 統括管理責任者は,不正使用防止推進責任者が報告する部局等における不正使用防止に関する実施状況を,不正使用防止計画推進委員会において検証させ,必要に応じて防止計画の見直しを行い,役員会の議を経たのち,学内外に公表することとしています。
公的研究費等に関する不正使用防止計画 |
公的研究費等の不正使用の防止に関する不正使用防止教育及び啓発活動の実施計画(令和6年度) |
不正使用防止推進責任者
- 部局等における公的研究費等の運営?管理について実質的な責任と権限を持つ者として,不正使用防止推進責任者(以下「推進責任者」という。)を置き,予算規程(平成16年島大規則第36号)第4条に規定する予算責任者をもって充てることとしています。
- 推進責任者は,防止計画に基づき,部局等における具体的な不正使用防止に関する対策を実施し,実施状況を確認するとともに,実施状況を統括管理責任者に報告することとしています。
- 推進責任者は,部局内の公的研究費等の運営?管理に関わる全ての構成員に対し,不正使用防止教育を実施し,受講状況を管理?監督することとしています。
- 推進責任者は,部局において,定期的に啓発活動を実施することとしています。
- 推進責任者は,部局において,構成員が,適切に公的研究費等の管理?運営を行っているか等をモニタリングし,必要に応じて改善を指導することとしています。
不正使用防止推進副責任者
-
推進責任者を補佐し,日常的に管理?執行等のモニタリングを行う者として不正使用防止推進副責任者を置き,推進責任者が指名する者(学科長等)をもって充てることとしています。
監事の役割
- 監事は,不正防止に関する内部統制の整備?運用状況について本学全体の観点から確認し,意見を述べることとしています。
- 監事は,特に,統括管理責任者又は推進責任者が実施するモニタリングや内部監査によって明らかになった不正発生要因が防止計画に反映されているか,また,防止計画が適切に実施されているかを確認し,意見を述べることとしています。
- 監事が前2項に示す役割を十分に果たせるようにするため,監査室,不正使用防止計画推進委員会及びその他の関連部署は,監事と連携し,適切な情報提供等を行うこととしています。
- 監事は,第1項及び第2項で確認した結果について,役員会において定期的に報告し,意見を述べることとしています。
責任体系
- 組織の責任体系について学内外に公表することとしています。
公的研究費等の不正使用の防止に関する責任体系 |
松江地区における不正使用防止に関する責任体系 |
出雲地区における不正使用防止に関する責任体系 |
3. 防止計画の策定?実施
防止計画の策定?実施
- 不正使用防止計画推進委員会(以下「推進委員会」という。)は,監査室と連携し,不正使用を発生させる要因がどこにどのような形であるのか,本学全体の状況を体系的に整理し評価することとしています。
- 最高管理責任者が定める基本方針に基づき,統括管理責任者及び推進委員会は,本学全体の具体的な不正使用防止対策のうち最上位のものとして,防止計画を策定することとしています。
- 防止計画の策定にあたっては,第1項で把握した不正を発生させる要因に対応する対策を反映させ,実効性のある内容にするとともに,不正使用発生要因に応じて随時見直しを行い,効率化?適正化を図ることとしています。
- 部局等は,不正使用根絶のために,推進委員会と協力しつつ,主体的に防止計画を実施することとしています。
公的研究費等に関する不正使用防止計画 |
4. 構成員等の遵守事項
公的研究費等の不正使用の防止に関する規則 第10条~第13条
行動規範の遵守
- 構成員等は,第3条に基づき最高管理責任者が定めた行動規範を遵守しなければなりません。
国立大学法人島根大学における公正な研究遂行のための行動規範 |
規則等の遵守
- 構成員等は,公的研究費等の取扱いについては,会計規則(平成16年島大規則第35号)のほか,本学が定める諸規則(以下「会計規則等」という。),補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)及び関係法令並びに競争的研究費等の交付等の際の条件を遵守しなければなりません。
- 構成員等は,公的研究費等による契約,旅費の支給,給与及び謝金支給等に関する事務処理手続について,会計規則等のほか,ルールを定めた契約事務マニュアル,旅費支給手続マニュアル,非常勤職員雇用手続マニュアル及び謝金支給手続マニュアル等に基づき,処理しなければなりません。
契約事務マニュアル(教員等用) |
旅費支給手続マニュアル |
非常勤職員雇用手続マニュアル |
謝金支給手続マニュアル |
※各事務手続きに係るQ&A集はこちらをご確認ください。(学内サイト)
不正使用防止教育の受講
- 構成員は,推進責任者が実施する不正使用防止教育に関する研修会等を必ず受講し,受講内容を遵守しなければなりません。
不正使用防止教育(学内サイト) |
誓約書の提出
- 構成員は,関係法令の遵守,不正使用は行わないなど,誓約書を最高管理責任者に提出しなければなりません。
誓約書の提出はこちら(Microsoft Forms) |
5. 適正な運営?管理の基盤となる環境整備
公的研究費等の不正使用の防止に関する規則 第14条~第17条
不正使用防止教育?啓発活動の実施
- 推進責任者は,統括管理責任者が策定する実施計画に基づき,公的研究費等の運営?管理に関わる全ての構成員を対象とした不正使用防止教育を実施しています。
- 推進責任者は,統括管理責任者が策定する実施計画に基づき,不正使用防止教育にとどまらず,構成員全体に対して不正根絶に向けた継続的な啓発活動を実施しています。
不正使用防止教育(学内サイト) |
啓発活動(学内サイト) |
ルールの明確化?統一化
- 適正な運営管理のための環境整備として,公的研究費等の使用及び事務処理手続きに関するルールを明確にしています。
契約事務マニュアル(教員等用) |
旅費支給手続マニュアル |
非常勤職員雇用手続マニュアル |
謝金支給手続マニュアル |
※各事務手続きに係るQ&A集はこちらをご確認ください。(学内サイト)
職務権限の明確化
- 最高管理責任者は,公的研究費等の事務処理に関する構成員の権限と責任について,業務の分担の実態と乖離が生じないよう適切な職務分掌を定めています。
契約事務の委任に関する規程 |
契約事務取扱規程 |
契約事務取扱要領 |
事務処理手続き等に関する相談窓口
- 公的研究費等の事務処理手続等に関する学内外からの相談に迅速かつ適切に対応するための相談窓口として,松江地区は財務部経理?調達課,出雲地区は医学部会計課に相談担当者を置いています。
- 競争的研究費等の取扱い等に関する相談窓口として,研究?地方創生部研究推進課に相談担当者を置いています。
- 雇用管理に関する相談窓口として,総務部人事労務課に相談担当者を置いています。
事務処理手続き等に関する相談体制 |
事務処理手続き等に関する相談窓口及び担当者一覧 |
6. 研究費の適正な運営?管理活動
研究費の適正な運営?管理活動
- 推進責任者は,構成員の公的研究費等の執行状況について,財務会計システム等により,適宜,その状況を確認し,著しく遅れていると認められる場合は,遅延理由を確認のうえ,必要に応じて改善の指導を行うこととしています。
7. 不正使用に関する通報?相談窓口
8. 不正使用に関する調査,報告及び不服申立て
9. 不正使用に関する調査結果の公表及び処分
公的研究費等の不正使用の防止に関する規則 第19条~第38条
告発等の取扱い,調査及び懲戒に関する規定の整備
- 公的研究費等の不正使用に関する通報?相談窓口として,財務部財務課,監査室及び弁護士法人山陰リーガルクリニックに公的研究費等不正使用通報?相談担当者を置いています。
- 通報?相談は,原則として顕名によるものとし,不正使用を行ったとする構成員の氏名,不正使用の内容,不正使用とする根拠,その他必要な事項を記載した封書の送付,電子メール又はファクシミリの送信及び面談により取り扱うこととしております。また,不正使用の事実が存在することが客観的に証明できる資料等がある場合には,その資料を提出することにより,匿名又は電話でも取り扱うこととしております。
- 公的研究費等不正使用通報?相談担当者が,不正使用に係る情報について,迅速かつ,確実に最高管理責任者に報告する体制を整備しています。
- 最高管理責任者は,以下の①から⑥含め,公的研究費等の不正に係る調査の体制?手続等を明確にした規則等を定めています。
① 告発等の取扱い
② 調査委員会の設置及び調査
③ 調査中における一時的執行停止
④ 認定
⑤ 文部科学省及び配分機関への報告及び調査への協力
⑥ 調査結果の公表 - 調査結果により,懲戒処分等を必要とするときは,その程度に応じて職員就業規則等により処分を課すこととしています。
通報?相談窓口及び担当者一覧 |
不正使用防止の通報(告発)?相談及び調査委員会に関する対応体制 |
役員服務細則 |
職員懲戒規程 |
10. 内部監査体制
公的研究費等の不正使用の防止に関する規則 第39条~第41条
監査室の内部監査
- 監査室は,内部監査規程に基づき監査を行い,最高管理責任者に意見を述べることとしています。
- 監査室は,効率的?効果的かつ多角的な監査を実施するために,監事及び会計監査人との連携を強化し,必要な情報提供を行うとともに,定期的に意見交換を行うこととしています。
内部監査規程 |
推進委員会の内部監査
- 推進委員会は,会計監査人と連携し,不正使用が発生するリスクに対して,重点的にサンプルを抽出し,抜き打ちなどを含めたリスクアプローチ監査及び換金性の高い機器等(消耗品を含む。)の管理状況を監査しています。
- 内部監査結果を推進委員会及び常勤監事に報告することとしています。
- 推進委員会は,前項の監査結果を検証し,必要に応じて防止計画を見直すとともに,不正使用防止教育の一環として推進責任者へフィードバックすることとしています。
監査結果の周知
内部監査の結果については,防止計画及び啓発活動にも活用するなどして周知を図り,本学全体として同様のリスクが発生しないように周知することとしています。
内部監査結果(学内サイト) |
11. その他
その他
- 文部科学省による研究機関に対するモニタリング等及び文部科学省,配分機関による体制整備の不備がある機関に対する措置の在り方
① 文部科学省は,資金配分先の機関においても研究費が適切に使用?管理されるよう所要の対応を行う責務を負っており,機関における管理体制について,「研究機関における公的研究費の管理?監査のガイドライン(実施基準)」(平成19年2月15日文部科学大臣決定,令和3年2月1日改 正)の実施状況を把握し,所要の改善を促すこととしております。
② 文部科学省は,毎年度,履行状況の実施方針等を定め,一定数を抽出し,機関におけるガイドラインに基づく体制整備の状況について調査することとしております。
③ 調査の結果,管理体制等に不備があると判断された場合は,文部科学省から管理条件を付され,さらに配分機関による間接経費の削減などの措置が講じられることになっています。 - 文部科学省,配分機関による競争的資金制度における不正への対応
機関が告発等を受け付けし,配分機関が機関から調査の要否の報告を受けた場合は,機関に対して当該事案の速やかな全容解明を要請し,機関から提出される報告書等を踏まえ,当該機関に対して改善を求めることになっており,また,研究費の管理は機関の責任において行うこととしているため,文部科学省及び配分機関は,競争的資金における不正を確認した場合は,研究者だけでなく,機関に対しても間接経費の削減などの措置が講じられることになっています。 - 本学における研究不正防止への対応として,研究不正防止対策本部規程に基づき「研究不正防止対策本部」を,研究活動の不正行為の防止に関する規則第6条の規定に基づき「研究活動不正行為対策委員会」を,公的研究費等の不正使用の防止に関する規則 第8条の規定に基づき「不正使用防止計画推進委員会」を設置しております。