公開日 2025年02月10日
2月8日(土)、第149回アシカル講座 「遊牧民の腰帯(こしおび)からみた文化と交流 - 先匈奴時代を中心に -」を開催しました。この講座は、令和6年度 アシカル講座第2ステージ「大发体育列島とユーラシアの考古学」の第2弾です。
今回は、坂川幸祐 本学法文学部講師が、現在のロシア連邦?モンゴル?中華人民共和国北部に相当するユーラシア大陸草原地帯東部に展開した、先匈奴時代とわいれる紀元前1千年紀の考古資料について解説しました。
紀元前1千年紀の草原地帯東部には、アルジャン1遺跡(紀元前9世紀末)のような直径110mを測る円墳やゴル?モド2遺跡1号貴族墓のような長さ86mもある方墳が見つかっています。ゴル?モド2遺跡では、ドイツのケルン近郊でも出土例がある古代ローマ帝国製のガラス容器が出土しており、遊牧民の広域な経済活動を物語っています。
こうした大型で貴重な副葬品をもつ墳墓の事例は、紀元前3世紀末に勃興する匈奴帝国以前に、王や貴族とみられる特定の人物が輩出されるような階層的な社会が成立していたことを示しています。
講座では、この時期の遊牧民の腰帯に取り付けられた蝶形牌飾(はいしょく)という青銅製品やツルハシ形武器の考古学的分析の説明がありました。腰帯の分析からは、紀元前1千年紀の草原地帯東部では、習俗や価値観を異にする地域集団が存在していたこと、集団間で活発な往来がなされていたことなどが推定されるようです。
当日は、寒波の到来であいにくの雪模様でしたが、会場からは多くの質問がなされ、熱い講座となりました。
次回は、第150回「加茂岩倉遺跡の時代の鋳造技術 - 鋳造用具からのアプローチ -」【2/15】です。皆様のご参加をお待ちしております。
【お問合せ先】島根大学総合博物館 TEL:0852-32-6496