第119回島根大学サイエンスカフェ「不思議!驚き!磁石に秘められた力」を開催しました

公開日 2024年08月28日

第119回島根大学サイエンスカフェ
不思議!驚き!磁石に秘められた力
 日時:令和6年8月5日(月)16時~17時10分
 講師:島根大学  先端マテリアル研究開発協創機構 教授 藤枝 俊

 第119回島根大学サイエンスカフェは、この4月に本学に新設した先端マテリアル研究開発協創機構の藤枝 俊 教授を講師に迎えて、「不思議!驚き!磁石に秘められた力」をテーマにオンラインで開催しました。

 藤枝教授は、磁性材料工学が専門で、20年にわたる磁石の研究において、「自分が感じてきた磁石の面白さをお伝えしたい。」と、磁石の不思議で驚きの性質と、その秘められた力を応用した自身の最新の研究について、クイズや実験を交えながらわかりやすくお話しました。
 磁石は、スピーカー(イヤホンの振動)、サーキュレーターのモーター、クレジットカード等の磁気記録、コンセント、電柱の変圧器、風力発電機など、現代では、ものをくっつけるだけでない能力で、私たちの身近なところで大活躍しています。
 そして磁石には、当たり前のようで、よく考えると不思議な性質があります。例えば、S極とN極には引力、同極同士には反発力がはたらきます。また、鉄に磁石を近づけるとくっつきます。つまり、鉄は磁石の仲間ですが、鉄同士では何も力がはたらきません。なぜでしょうか?その答えは「磁力線」と「磁区」にあります。「磁力線」とは、磁石のN極からS極に発生する見えない力です。磁石の中の電子の運動によって発生し、これが磁石にはたらく力の起源です。また、磁石の仲間である鉄の内部は、「磁区」と呼ばれるN極?S極が揃った複数の領域で構成され、磁力線が発生しない構造となっています。鉄同士がくっつかないのはこのためです。鉄に磁石を近づけると、内部の磁区の割合が変化して磁力線が発生するので、磁石とくっつくようになります。この時、鉄の長さは僅かに変化しており、これは「磁歪」という磁石のもう1つの驚きの性質です。例えば、1mの鉄の棒で髪の毛の太さ程度の最大0.03ミリ程度伸びるそうです。
 藤枝教授の最新の研究として、「磁歪」の逆効果である「逆磁歪効果」を利用した「振動発電」について紹介がありました。具体的には、磁石を近づけると鉄の10倍以上伸びる特殊磁石にコイルを巻きつけて、指で弾く振動で複数のLEDを点灯させるものです。振動によって特殊磁石の寸法が伸縮し、コイルをとおる磁力線の数が変化することで発電する仕組みです。この研究は、大发体育で年間25億個消費されている乾電池の代替のほか、配線不要な照明配置、見守り?防犯など、IoT(Internet of Things)技術への応用にも期待されます。「磁石には私たちの社会をより良く出来る秘められた力がある。こうした技術がいつかみなさんの目に触れるような形で普及できるように取り組んで行きたい。」と、藤枝教授は今後の研究に向けて意気込みを語りました。

 講演後は、「磁石を原子レベルまで小さくするとS極?N極はどうなるか。」、「振動発電に使われる特殊磁石にはどのような特性が必要か。」など、時間一杯、質問が相次ぎました。
 今回は48名の参加がありました。参加者の皆様、ありがとうございました。

 次回は、「なぜ植物は日焼けをしないのか?」(講師:生物資源科学部 教授 丸田 隆典)をテーマに10月9日(水)に開催します。ご参加お待ちしております! 

                    
               
               藤枝 俊 教授の講演の様子  

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  研究?地方創生部 研究推進課
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