【学生取材】「教員の"す" ~教員の素顔に迫る!島根大学人間科学部心理学コース 高見友理先生 後半~」

公開日 2023年08月16日

2023.6.5

今回インタビューさせていただいたのは、人間科学部心理学コースの高見友理先生です。

前回取材した石原宏先生と同じく私たちが所属する人間科学部の教員であり、1年時の指導教員でもありました。

この記事を通じて、高見先生の素敵なお人柄が伝われば幸いです。

 

後半では高見先生の研究についてお聞きしました。

 

高見友理先生 プロフィール

●研究分野:臨床心理学

●研究テーマ:分析心理学的心理療法?風土心理研究?被害者支援

●担当教科:風土心理研究

 

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目次

ー 島根大学の教員になった経緯

ー 風土心理に焦点を当てた研究

ー 古いものに惹かれる

ー 土地が心理に与える影響

 


突然の声掛け

 

Q:どういう経緯で島根大学の教員になったのですか?

 

高見先生 私の場合は特殊かもしれないですが、今から20年前くらい前に突然(島根大学から)教育学部生にカウンセリングのロールプレイやアクティブ?ラーニングを教える教員が必要だということで、お声をかけてもらいました。

 

そのときは偶然京都での仕事(被害者支援のカウンセラー)を終えて、島根に帰ってきていたときだったので、たまたまタイミングが良かったですね。

 

数年の勤務で終わるのかな…と思っていましたが、気が付いたら今に至るので、分からないものですね。


■神話との出会い/「神話には、人の心を理解するための何かがある」

 

Q:風土心理に焦点を当ててやるようになったのはいつですか?

 

高見先生 私は出雲出身ですが、それこそ神話には全然詳しくなかったんですよ。だけど、大学院生のときに場面緘黙(※)の青年と長らくカウンセリングをしていたことを後からアドバイスを受ける機会があって、大人になっても喋ら(れ)ない皇子の神話があることを教えてもらったんです。その神話を通してみると、相談者の青年が抱えていた深い孤独や悲しみについて、「あっ!」という感じというか、今までと違う次元で理解できたような気がしたんです。

※場面緘黙(ばめんかんもく)…家などの安心できる場所では話すことができるが、特定の社会的状況(例:学校など)において、話すことが難しい状態

 

そのときから、神話の世界や神話のイメージには人間の心を理解するためのヒントが隠されていることがわかって、すごく印象に残りました。

 

相談者さんの心が変わっていくときや治っていくときに、そういう昔の風習とか神話のイメージが表現されたり、現れたりする不思議さみたいなものが興味深かったのかもしれません。

 

うまく言い表せないですが、神話には“人の心を理解するための何かがある”

そういった面をこれから更に研究できたらいいなと思っています。


■雅楽に感じる”萌え”

 

Q:(神話の話がでましたが)古いものに惹かれますか?

 

高見先生 そうかもしれませんね。古いものに惹かれるっていううちの一例ですが、趣味で雅楽をしているんです。

 

雅楽ってそれこそ6世紀ぐらいに仏教と一緒に伝来しているんですね。大仏開眼のときに演奏された舞楽とかそういう曲が今でも伝わっているんですよ。私たちもその曲を習って演奏もできて、大仏が開眼したときにこの曲が…とか考えると、よく分からないけど、私の中ではなんかちょっと“萌え”がくるというか。

 

 ーーー何百年も前からですか??

 

高見先生 名もないいにしえの人たちが伝えた音楽をずっと継承してきた。それこそ古代の中国大陸とか朝鮮半島とか、あとベトナムとかインドの方からずっと伝わってきた曲だから海外の曲なのですが、ユニバーサルというか国境がないのが面白いところですね。

 

 ーーー大发体育的なのにグローバルですね

 

高見先生 大发体育人の感覚と少し違ったりします。最近は舞とかも習いながら趣味を楽しんでいるので、臨床心理や神話とか、そういう研究と雅楽の趣味は結構根っこではつながっている感じが自分の中ではしていて、そういう部分をいろいろ深めていけるといいなあって思いますね。

 

 ーーー素敵ですね。

 

高見先生 (話を聴いて)ぽかんってする人はすると思うんですけど。自分でもすごいマニアックだなと思っています。

 

 ーーーそれは昔からですか?

 

高見先生 そうでもないですね。多分、臨床心理をやる前と後ではまたずいぶん違っているのだと思います。臨床心理を学ぶ中で出会った人々に影響されたことも多いと思います。自分は自分なんだけど。

 

 ーーー臨床心理を学ぶ前と後では、感覚とか(こころの)変化があって遠く感じるってことですかね

 

高見先生 そうそう、その感覚に近いかもしれません。

 

カウンセラー側も、トレーニングされて、より“自分はなんだろう”とかって考えたりするから。若い頃はなんかもっと平均値を目指さなきゃいけないとか、皆と同じじゃなきゃいけないとか、思い過ぎていたのかもしれませんね。

 

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■「神様のことをするっていうことがその人たちをすごく輝かせる」

Q:先生は島根出身で、一度島根を離れてまた戻って来られましたが、土地が心理に与える影響を感じたことはありましたか?

高見先生 風土心理のことを考え出したのは、島根に戻ってきて大学教員になってからです。

 

あるときに島根で考古学の先生を招いて、一般の人も聞くことが出来る松江の古代歴史の勉強会があって、そこにたまたま参加したことがありました。

 

そこで、ご高齢の方々が考古学や神話の話とか、自分のルーツの祖先がどうだったのかとかいう講師の話を、目をキラキラさせながら生き生きと聞いておられたのが初めて見る光景でした。

 

この人たちにとって生きる喜びがそこにあるんだろうなって思ったのが、印象深いことだったかな。

 

そこから、例えば出雲大社の様々な神事や地域のお祭りとかに力を注ぐ人たちにいろいろインタビューをして、そこに生きる喜びがあることを感じました。お祭りも、現代の私たちからすればただの一つの年中行事なんだけど、でもその場所にいてコミットメントしている人からすれば、聖なる行為です。

 

神様に関することをするっていうことが、その人たちをすごく輝かせるっていうことに触れて、興味を持ったかな。

 

 ーーー私たちの世代とかだとそういう神様ごとに関心が薄いこともありますよね。

 

高見先生 そうですね、当然だと思います。でも、何か熱狂するものがあったりとか、形を変えてみんなそこにエネルギーを注いだり注がれたりっていうのは、推し活とか、スポーツとかでもそうかもしれない。

 

何か形を変えて持っているのかもしれないけど、「自分が住むその土地と繋がる」っていうことが心を豊かにする感じっていうのは、世代を問わずあるんじゃないかなっていうのを思ったりします。

 

地域っていう形で、お祭りとかになると「自分が土地に根付いている」「土地に受け入れてもらっている」「祝福されている存在なんだ」といった心の安定感っていうのは、生きる上でプラスに働いてくるような気がします。

 

神様のためにやっていることなんだけど、そのことによってこちらがすごくパワーをもらうというのもお祭りの機能なのではないかと思います。

 

それこそ最近私は舞を習ったんです。これが私なんですけど。

 

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 ーーーすごい綺麗ですね。

 

高見先生 緊張で足が震えそうになりましたが、神様の前に奉納する場面があって。

 

失敗もしたんですけど、すごい…なんとなく…説明はうまくつかないんだけど、神様に向けてやることだけど自分がすごくエネルギーをもらうっていうのかな。そんなのもありますね。

 

もっと若い時にやればよかったんだけど、もう体力がね。大変です(笑)

 

 


最後までお読みくださりありがとうございます。

また、取材にご協力いただいた高見友理先生、ありがとうございました。

 

〈〈インタビューを終えて〉〉

大学時代に一度教育の現場から離れた高見先生が巡り巡って大学の教員として教壇に立つことになるというエピソードは不思議な“縁”を感じました。

物事はどこか根っこの部分ではつながっているのではないか。高見先生は神話や雅楽、臨床心理につながりを感じられていましたが、私も全く別の事象がふとしたときに繋がっているように感じられることがあります。その感覚の裏には一体なにが働いているのか、分かるときがきたら素敵だなと思います。

 

前半では先生ご自身についてお聞きしました!

是非、合わせてお読みください。

(前半)/docs/2023080900020/

 

 

(学生広報サポーター 取材?撮影 淺井明日葉、綾部珠咲)