生物資源科学部環境共生科学科の 吉岡秀和 助教らが河川流量の最適化問題を無限次元確率微分方程式を用いて論じました

公開日 2022年06月24日

生物資源科学部環境共生科学科の 吉岡秀和 助教らは、「無限次元確率微分方程式」と呼ばれる一般的ではない数理概念を用いて、我々の生活に身近な河川流量の最適化問題を研究しました。成果は、数値計算に関する国際会議International Conference on Computational Science(2022年6月21日-23日イギリス現地およびオンライン開催)において、オンライン口頭発表されました。この国際会議は、CORE(Computing Research and Education Association of Australasia.計算分野の国際会議ランク付け)において,A-Rank(上位16.06%以内)に分類されています。

(国際会議 HP)
https://www.iccs-meeting.org/iccs2022/

(CORE HP)
http://portal.core.edu.au/conf-ranks/

Yoshioka, H., Tsujimura, M. (2022). Derivation and Computation of Integro-Riccati Equation for Ergodic Control of Infinite-Dimensional SDE. In: Groen, D., de Mulatier, C., Paszynski, M., Krzhizhanovskaya, V.V., Dongarra, J.J., Sloot, P.M.A. (eds) Computational Science - ICCS 2022. ICCS 2022. Lecture Notes in Computer Science, Vol. 13353. Springer, Cham.
DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-031-08760-8_47

 この口頭発表では、「無限次元確率微分方程式」と呼ばれる一般的ではない数理概念を用いて、河川流量という我々の生活に身近な存在を新しい数学的対象として見つめ直したうえで、その最適化問題を論じています。
 無限次元確率微分方程式は、「ランダムで複雑な現象を無限個のよりシンプルで扱いやすい要素に分割して考える」方法です。予測不能な形で乱高下する株価等の金融工学的対象について主な研究がなされてきており、環境に関わる分野における応用例を欠いていました。豊かな数理構造をもたらす無限次元性の概念そのものが工学的には取り扱い難く、実課題への応用が簡単ではありません。とくに、河川流量の場合はこの概念自体が、多彩な時間スケールで生じる洪水の発生や減衰ひいては河川の流況の長記憶性(過去が現在の状態に与える影響がゆっくりとしか減衰していかない性質)と直結するため、その理解深化は重要な課題です。
 今回の発表成果では、ひとつの無限次元確率微分方程式を、時間スケールに相当するパラメータに着目して無限個のよりシンプルな方程式に分割して再考することで、無限次元性がもたらす技術的な壁を克服しています。とくに、ごく簡単な流況管理の最適化問題を対象として、安定した数値計算が可能な実例を提示しました。また、分割方法次第では数値計算の収束が著しく悪くなることを示し、分割方法の重要性を指摘しました。
 今後は、より現実に近い設定のもとでの問題解決に向けた研究が進められる予定です。また、定式化について工学的にはそれらしく思える部分についても、理学的にはどう解釈するのが正解かわからないものもまだまだ残されています。こうした、理論的課題の解消も今後の課題です。

 

 

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