公開日 2021年11月19日
第103回島根大学サイエンスカフェを11月18日(木)に、行政学を専門とする法文学部の毎熊浩一教授から「市井民主主義の可能性を考える-『自分ごと化会議』を事例として」をテーマに、学外者および本学教職員29名を迎え、オンラインで講演を行いました。
「自分ごと化会議」とは無作為に選ばれた市民による会議であり、全国で20以上の自治体において採用されている方法論ですが、多くは行政主催であるのに対し、松江市の本会議は市民が主催である点が特徴です。原発、自然エネルギーをテーマに市民団体が2回程度、開催しました。
毎熊教授から、「自分ごと化会議」の形態である、無作為に選ばれた市民による会議の重要性を説明する前に、その背景として、対比される旧来型の会議について、写真を交えて紹介がありました。年齢層の高い男性による委員占有率が高い、行政関係者、有識者等で構成される旧来型会議、また最近増加しつつある参加希望者を委員に加えた会議では女性、若い世代が増えており、稀に見られる全員、参加希望者で構成した会議では確立した主張を持つ委員が多い故に結論がまとまり難く、議論が偏る可能性がある、と3タイプに分けて、それぞれの特徴の説明がありました。
いずれの3タイプとも異なる「自分ごと化会議」は、無作為選出ゆえに年代、性別、立場が多様で、動画による会議の様子からも、旧来型の会議とは雰囲気が異なっており、多様性が感じられました。
学術的には、議会政治が民意を反映していないことの不満と政治不信といった、代表制民主主義の欠陥を補完する、Mini-Publicsと呼ばれる無作為に選ばれた市民による熟議デモクラシーの一形態であるとの説明があり、続いて、松江市の「自分ごと化会議」の実施方法、成果等について紹介がありました。
会議の委員は約20人であり、松江市人口の1%と規模は大きくはないが、地域ではタブー視されてきた原発がテーマとされ、そのテーマに沿って、無作為によって選ばれた、所謂、普通の市民が集まり、その市民によって第1期、引き続き第2期の会議が開催され、継続されている事実は、民主主義の新しいツールを提起するものであると同時に、政治を市民の手に取り戻す、これからの民主主義を模索する実験であったとの総括がありました。会議に委員として参加した市民の満足度が非常に高かったこと、熟議デモクラシーの場の形成に留まらず、各個人の市民としての成長が著しいこと等の紹介もあり、この取り組みが益々拡大することを祈念して講演を終了しました。
次回の第104回島根大学サイエンスカフェは、1月10日に同じくオンラインにて開催予定です。引き続き、皆さまのご参加をお待ちしております。
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毎熊 浩一 教授の講演
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