公開日 2021年06月23日
生物資源科学部 西村浩二准教授と大阪市立大学、奈良女子大学、東海大学、エア?ウォーター株式会社との研究グループが、体内で発する特定の蛍光が加齢に伴い増大し、その蛍光が老化の指標となる最終糖化産物に由来することを、モデル生物『線虫』を用いて実証し、その研究の成果が国際学術誌npj Aging and Mechanisms of Diseaseに掲載されました。
◆本件のポイント!
?体内から発せられる特定の蛍光が加齢に伴い増大することおよびその蛍光が老化の指標となる最終糖化産物に由来することを、モデル生物『線虫』を用いて実証
?生体に負担を与えることなく、体内の蛍光物質をモニタリングできる方法を開発
?本蛍光測定法を用いて抗糖化作用を有する素材を、探索?評価するシンプルな実験系を開拓
→光る糖化物質でアンチエイジングを考えよう!
◆本件の概要
世界的な高齢化社会を迎え、認知症や癌など加齢性疾患に対する予防対策が一層重要になる中、生体内の『糖化』が老化や生活習慣病の重要な危険因子として注目されつつあります。糖化とは、生体内で糖の分子がタンパク質?脂質?核酸と非酵素的に結合し、最終糖化産物 (AGEs)を形成する反応のことです。体内のAGEs量は老化や糖尿病?動脈硬化など加齢性疾患に伴い増加することが知られており、生体内のAGEs量を測定すれば老化や加齢性疾患を予測する指標になると期待されています。しかし、ヒトや哺乳動物を用いた自然老化の実験には数年の期間を要し、AGEsの検出法も侵襲的(生体に直接的な負担を与える手法)な血液検査などが主流で、抗体を用いる高コストかつ特殊な実験操作などが必要となります。そのため、生体内の糖化と老化の関連性は未だ不明な点も多く、簡便に評価できる方法も確立されていないのが現状です。
大阪市立大学、奈良女子大学、東海大学、エア?ウォーター株式会社と島根大学生物資源科学部の西村 浩二(にしむら こうし?)准教授の研究グループは、老化研究のモデル動物としてよく用いられる『線虫』を用いて、 生体内で特定の蛍光を発する物質が加齢に伴い増加することを見出しました。その蛍光は最終糖化産物(advanced glycation end products: AGEs)に由来するもので、線虫の余命とも相関していることがわかりました。本モデルの測定技術は、今後、抗糖化素材の探索?評価への活用が期待されます。
本研究の成果は、2021年 6月 7日(月)18時(大发体育時間)に国際学術誌「npj Aging and Mechanisms of Disease」へ掲載されました。
Komura, T., Yamanaka, M., Nishimura, K. et al. Autofluorescence as a noninvasive biomarker of senescence and advanced glycation end products in Caenorhabditis elegans. npj Aging Mech Dis 7, 12 (2021).
https://doi.org/10.1038/s41514-021-00061-y
詳細については、大阪市立大学のプレスリリースも合わせて御覧ください。
https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2021/210607
◆本件に関する図や写真
左:若齢線虫と老齢線虫の蛍光強度(赤いほと゛蛍光強度か゛高いことを示す)
右:若齢線虫と老齢線虫の蛍光顕微鏡画像(蛍光部:青色)
大阪市立大学の記事
https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2021/210607
の一部を大阪市立大学から書面で許可を得て一部改変して再掲しています。
◆本件連絡先
島根大学生物資源科学部 准教授 西村 浩二
TEL:0852-32-6449