総合理工学研究科機械?電気電子工学領域 新城淳史准教授らによる論文が、第49回流体力学講演会/第35回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウムにて最優秀賞(航空宇宙数値シミュレーション技術部門)を受賞しました。

公開日 2017年12月28日

 自動車や航空機のエンジンなどのように噴霧燃焼を利用する場合、燃費や排ガス性能の向上のためには燃料噴霧を精密に設計する必要があります。
 しかし、これまで噴霧シミュレーションを行う際には、実験結果に合わせて手作業でパラメータをすりあわせる後付けのチューニングが必要であり、本来の意味の予測になっていませんでした。そのため、設計現場でシミュレーションはあまり信用されていませんでした。
 本研究では、長年の理論考察?実験?シミュレーションの積み重ねを行い、根本の噴霧の物理過程を解明することであらかじめ普遍的なモデルを設定できるようになりました。
検証計算では非常に良好な予測ができることが確認され、本受賞はその成果が高く評価されたものです。自動車業界等への波及効果も期待されています。
 
タイトル:
「実験によるパラメータチューニングを必要としない新しい乱流噴霧ハイブリッドLESコードの開発」
著者:
新城 淳史(島根大学)?梅村 章(名古屋大学、名古屋産業科学研究所)

論文概要:
本研究では、これまでの微粒化(噴霧形成)の知見の蓄積をもとに、微粒化物理を正しく取り込んだ新しい乱流微粒化モデルを実際に実装し、エンジンシミュレーションに適用できるよう新しいコードを開発しました。
微粒化には乱流共鳴モードとRayleigh-Taylor(RT)モードを組み込んであります。また、このモデルの実装のために、Euler-Euler法とEuler-Lagrange法のハイブリッド型のラージエディシミュレーション(large eddy simulation;LES)コードを構築してあります。
自動車エンジン噴霧を模擬した検証計算では、非常に良好な予測ができることが確認されました。
本手法の優位性は、以下のようです:
(1)モデルの中に恣意的パラメータを含まず、実験結果を見ながらのチューニングが必要ありません。
(2)噴射ノズル直下から液柱コアも含んで解析しているため物理的に一貫しており、ノズル上流の噴射装置の細部にも拡張できます。
これまでこのように微粒化モデルが完全に閉じた噴霧解析コードはありませんでした。
本コードでは、噴霧の発達や微粒化特性において予測性が格段に向上しています。
このようなコードは、研究のみならず産業界でも広く使われることが期待されます。

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