公開日 2017年06月20日
附属図書館展示室で現在開催中の手錢記念館コレクション展「江戸力―献立いろいろ―」のギャラリートークを6月15日に開催しました。ギャラリートークでは、今回の展示会の企画をしていただいた手錢記念館学芸員の佐々木杏里さんに、展示の見どころを解説していただきました。
今回展示したのは、手錢家に伝わる江戸時代中期から後期まで約百年間の史料から選んだ冠婚葬祭、御用宿、私的なもてなしなどの様々な行事や場面で供された献立の記録と、松平不昧公が隠居後に江戸大崎で行った茶会記の写しなど茶懐石の献立の記録です。
また、献立に記されている特殊な器なども何点か展示しました。献立からはいろいろな事が見えてきますが、器と献立がどちらも残っていたことで、器の用途が具体的にわかり、文字からは分からない器の形や大きさも見えてきます。
こうした史料に記された献立の記録を読むと、様々な興味深い点が見えてきます。そのような中からいくつかをご紹介します。
旬に先駆けて少し珍しい食材が使われていたり、全く季節外れの時期に、何らかの方法で保存していたと思われる貴重な食材が使われていることが分かる史料があります。このような献立は特別な場に供されたものだろうと考えられ、精一杯のもてなしをしようとした気持ちが見えてきます。
また、情報収集も不可欠だったということが分かる資料もあります。伊能忠敬が測量のため出雲国に入国する前年には、他藩でどのような対応をしていたかを事細かく調べた資料が作られており、その中には石見藩で出された献立の写しもあります。しかし、文化三年に実際に伊能が手錢家に宿泊した時には、伊能は体調を崩していたため食事はほとんど取らなかったようで、事前の準備は報われなかったかもしれません。
御用宿を務めていた手錢家には、藩の重役、大森銀山代官、松江城の女中方などが宿泊しました。その時に出された料理の献立を較べてみると、松江城の女中方に出された料理は品数も多めで豪華なようです。大社参詣を表向きの目的として二泊三日の日程でやってきた女中方は、出雲大社や日御碕神社へ参詣しただけではなく、浜で地引き網を見学するなど羽を伸ばし、食事やお酒を楽しんで帰って行ったのでした。
今回は展示していませんが、葬儀の記録を見ると、香典として現代ではあまり見かけない「氷コンニャク」が沢山届いていたことが分かります(〇〇家より四十枚、〇〇家より三十枚など、合わせると数百枚も届いたようです)。この食材は、祝事、忌み、御用宿などあらゆる場で用いられました。山ほど届いても有り難いものだったようです。最近では、「氷コンニャク」はダイエット食品として人気が高まりつつあるようです。
(参考)(クックパッド)https://news.cookpad.com/articles/22488
手錢記念館コレクション展「江戸力―献立いろいろ―」は、6月25日(日)まで開催します。どうぞお見逃しなく。