公開日 2014年05月14日
出雲文化学の第4回講義が5月9日、本学ホールであり「考古学からみた『出雲国風土記』と出雲国府」と題して法文学部社会文化学科の大橋泰夫教授が講義しました。講義には市民パスポート会員46人を含む257人が受講しました。
大橋教授はまず、地方支配のために都(平城京)から派遣された国司らが働く役所である国府について解説しました。儀式や饗宴などを行う場として最も重要な国庁や文書行政など実務を執り行う曹司、都の貴族邸宅に類似した国司の住む国司館を説明し、出雲国府の特徴として全国で唯一玉造りの工房があったことを挙げました。
さらに国庁で行われた元日朝賀の儀式を国司と郡司が支配服属関係を確認する重要なものとして紹介し、国府が天皇を頂点とした律令国家が地方を支配するための存在であったことを強調しました。
奈良時代の地誌であり、現存する風土記としては唯一完全な形に近い「出雲国風土記」の記載と出雲国府跡の発掘調査成果を呈示し、国家の威信を示すために実用性を超えた都の荘厳化が地方の国府に影響して、出雲国府は鴟尾で飾られた丹塗り瓦葺きの豪奢な建物であったとし、中央において国の骨格が形成されていくとともに在地社会が大きく変容していった契機こそが国府の独立であるとしました。国府の独立時期について大橋教授は、現在学会で八世紀前半とする説と七世紀末から八世紀初頭とする説のふたつが議論されており、現状では正殿しか見つかっていない出雲国府のさらなる調査研究がこの問題を解決するカギを握っている、と話しました。
出雲文化学第5回講義は5月23日、島根県神社庁参事(万九千神社宮司)の錦田剛志氏が「出雲『神在祭』にみる祭祀の古層~奉仕する者の立場から」と題して講義します。
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