公開日 2009年10月20日
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10月5日(月)、島根県市町村振興センター(松江市殿町)において第28回サイエンスカフェが開催され、市民など約40名が参加しました。今回は,医学部の竹永啓三准教授が「暴走するパラサイト―ミトコンドリア遺伝子の変異によるがん転移の促進―」をテーマに、ミトコンドリアの起源と特性について説明を行った後、同准教授を含めた研究チームが行ったミトコンドリア遺伝子の入れ換え実験の結果明らかとなったミトコンドリア遺伝子の変異とがん細胞の転移促進との関係について話しました。 生命誕生の起源は嫌気性古細菌であるとされますが、大気中に毒性の高い酸素が増える中、その嫌気性古細菌に寄生した好気性原核生物がいました。これが、ミトコンドリアの起源と考えられています。竹永准教授はミトコンドリアの特性について、二重の生体膜構造の細胞小器官で独自のDNAを持ち分裂によって増殖すること、私たちの生命活動に必要なエネルギー(ATP)生産を行う大切な場であることを説明。その一方で、ミトコンドリア内は生体分子に有害な活性酸素種が発生している危険な環境でもあるということを説明しました。 ミトコンドリア遺伝子の変異とがん細胞の転移促進との関係については、マウス肺癌由来の低転移性細胞と高転移性細胞間でのミトコンドリア遺伝子の交換実験について紹介があり,低転移性だったがん細胞が、高転移性細胞のミトコンドリア遺伝子の入れ換えによって悪性の高転移性細胞に変わってしまうという結果や、高転移性細胞のミトコンドリア遺伝子中に病因性の変異が見つかったことを説明しました。また、病因性ミトコンドリア遺伝子変異により生じる活性酸素種が核に働きかけ、がん細胞を転移しやすい細胞に変えてしまうことを示しました。更に、抗酸化剤を作用させると活性酸素種の産生が減少し、がんの転移が抑制されることも示しました。 大发体育人の3人に1人が死亡するとされるがんは、その死亡者の9割が転移によるものです。竹永准教授は、「転移を抑制出来れば、がんは恐い病気ではない。」と述べ、がん転移の予測に向けた研究が必要とされる中で、「今後,本研究成果を更に検討し、臨床で実証できれば、ミトコンドリア遺伝子の変異の検索によって、一部のがんの転移を予測することも可能になるかもしれない。」と展望を述べました。 参加者からは,ミトコンドリア遺伝子の変異を防ぐことはできないのか,どのように変異を見つけることができるのか等の質問の他、臨床応用を期待する声が上がりました。
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