島根大学お宝研究vol.14
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5?プロジェクトリーダー …波場 直之 Naoyuki Haba(学術研究院理工学系?総合理工学部担当?教授)Challenge for revealing the origins of matter and charge山田 敏史 Toshifumi Yamada(学術研究院理工学系?戦略的研究推進センター担当?特任助教) 清水 康弘 Yasuhiro Shimizu(戦略的研究推進センター?研究員)Of the four forces in Nature (gravity, electromagnetism, "weak interaction", "strong interaction"), the Grand Unified Theory unifies electromagnetism, weak interaction and strong interaction into one force. Since this theory can naturally explain the coincidence of the abolute values of the electric changes of proton and electron, it is an attractive and viable hypothesis. To prove the Grand Unified theory, one has to discover "proton decay", where the proton, which is supposed to be stable, decays very rarely. At present, the Super-Kamiokande detector in Kamioka, Gifu is eagerly searching for proton decay, and its successor, Hyper-Kamiokande, is going to continue the search. In the present project, we have, for the first time, fully revealed that two different decay modes of proton can be observed and that their observation allows us to distinguish different types of the Grand Unified Theory.スーパーカミオカンデ検出器の内部。ここに水を入れて実験します。 ? Super-Kamiokande Collaboration本プロジェクトが発表し,現在査読中の論文に含まれるグラフの一部。縦軸が陽子崩壊の二つのモードの頻度の比,横軸が片方のモードの頻度,各点が大統一理論の予言を表しています。陽子崩壊の二つのモードTwo modes of proton decay研究者紹介概 要大統一理論は,自然界の四つの力(重力,電磁気力,「弱い力」,「強い力」)のうち,電磁気力,弱い力,強い力を一つに統一する理論であり,陽子と電子の電荷の絶対値の一致を自然に説明できる点で魅力的かつ有力な仮説です。大統一理論を証明するには,安定なはずの陽子が極めて稀に崩壊する「陽子崩壊」を発見する必要があります。現在,岐阜県神岡の検出器スーパーカミオカンデで陽子崩壊の精力的な探索が行われ,その後継のハイパーカミオカンデでも行われます。本研究で私たちは,陽子の二つの異なる崩壊モードを観測できる可能性があること,それにより異なる種類の大統一理論を区別できること,を世界で初めて詳細に明らかにしました。特色?研究成果?今後の展望自然界には,重力,電磁気力,中性子等の崩壊をつかさどる「弱い力」,クォークを結びつけて核子等を作る「強い力」の四種類の力が存在します。電磁気力,弱い力,強い力の三つを単一の力の現れと考える「大統一理論」は,陽子と電子の電荷の絶対値の一致を自然に説明できることから,その正しさが有力視されています。大統一理論は,安定なはずの陽子が極めて稀に崩壊する「陽子崩壊」を予言します。これは未発見現象ですが,もし発見できれば大統一理論の重要な証拠となります。現在,岐阜県神岡のスーパーカミオカンデ検出器が精力的に陽子崩壊を探索しており,さらに,その後継として2027年に稼働するハイパーカミオカンデ検出器がより大規模な探索を行います。私たちは,ハイパーカミオカンデにおいて,陽子崩壊の二つの異なるモード,「陽子から荷電K中間子とニュートリノへの崩壊」と「陽子から中性K中間子とミュー粒子への崩壊」,が共に観測される可能性があることを世界で初めて詳細に議論しました。さらに,これらの崩壊モードの頻度の比が,大統一理論の構造を探る手がかりであり,異なる種類の大統一理論の区別を可能にすることを明らかにしました。社会的実装への展望ハイパーカミオカンデ実験は,水中を飛ぶ荷電粒子が出すチェレンコフ光を利用して陽子崩壊を探索しますが,荷電K中間子や中性K中間子を含む状態への崩壊を観測するには,水ではなく液体アルゴン(沸点-186度)を用いた次世代の検出器の方が圧倒的に有利です。本研究は,液体アルゴン検出器の開発に強い動機付けを与えます。この検出器に使われる液体アルゴンの製造?運搬?貯蔵技術は,工業に直結しています。物質と電荷の起源の解明への挑戦
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