島根大学お宝研究vol.14
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?プロジェクトリーダー …髙原 輝彦 Teruhiko Takahara(学術研究院農生命科学系?生物資源科学部担当?准教授)In this project, I have developed "environmental DNA technology" of the innovative biological monitoring method for Japanese smelt (Hypomesus nipponensis) and icefish (Salangichthys microdon) of the seven rare species in Lake Shinji. Then, in Hirata-Funagawa river as a model field, I analyzed the eDNA samples collected from May to October. As a result, compared to Japanese smelt, eDNA of icefish was detected a little earlier season. Moreover, I found that eDNA concentrations of the two species gradually decreased after peaking in July, and were almost undetectable in October. These results seem to reflect the appearance/disappearance seasons of Japanese smelt and icefish in Hirata-Funagawa river. In the future, I would like to clarify the reason why eDNA of the two species was not detected around autumn.8宍道湖のほとりにあるワカサギ孵化施設(宍道湖漁協所有)(写真提供:藤井正人氏)。平成6年の猛暑以降,本種の漁獲量が激減しています。県庁所在地でワカサギが漁獲されるのは全国的にも珍しいそうです。地元の悲願であるワカサギの資源回復実現へ貢献できるように取り組んでいきます!環境DNAを用いた平田船川におけるワカサギとシラウオの遡上?消失時期の推定Estimation of appearance/ disappearance occasion of Japanese smelt and icefish in Hirata-Funagawa river using environmental DNA研究者紹介概 要本研究ではこれまでに,宍道湖七珍のワカサギとシラウオを対象にして,革新的な生物モニタリング法の“環境DNA技術”を開発しました。そして,平田船川をモデルフィールドとして,5月から10月までの期間に採取した環境DNAサンプルを分析しました。その結果,ワカサギのDNA出現時期に比べて,シラウオの方が少し早い時期にDNAが検出されること,7月をピークにこれら2種のDNA濃度は徐々に減少し,10月にはほとんど検出されなくなることなどがわかりました。これらの環境DNA結果は,平田船川におけるワカサギとシラウオの出現/消失時期を反映しているものと思われます。今後は,秋頃からこれら2種のDNAが検出されなくなる理由を明らかにしたいと考えています。特色?研究成果?今後の展望生物の減少を食い止め,保全するためには,まずは,どこにどんな生き物がどのくらい棲んでいるのか,さらには,それらが健康な状態なのかどうかを知る必要があります。本プロジェクトでは,水の中に溶け出た生き物のフンなどに由来した環境中の生体高分子(DNA?RNA?タンパク)を調べる手法を開発し,宍道湖七珍を含む水生生物などの生息状況を簡便に評価できるようになることを目標にして進めてきました。これらの手法は,現場ではわずかな水を汲むだけ,あとはそれを持ち帰って濾過や目的物質の抽出?測定を行います。つまり,危険や多大な労力を伴う野外調査の負担を大幅に軽減できる大きな利点があります。宍道湖や中海のような汽水域は多種多様な生物種が利用するため,本分析手法を最大限に活用できると考えています。本研究の成果は,島根県の象徴である宍道湖における生物多様性の保全や持続可能な水産資源管理の実現に役立てることができると確信しています。社会的実装への展望本プロジェクトでは,地元自治体などにおける環境調査や資源管理の際に実用的に利用できる安価で簡便な生物モニタリング手法の開発を進めており,将来的な社会実装を見据えて取り組んでいます。実際,本プロジェクトの成果を元に,島根県水産技術センターとの共同研究「シラウオ資源予測手法の開発」に発展しており,今後は,その他にも様々な実践的な研究?調査を展開していく予定です。環境中の生体高分子を用いた宍道湖七珍復活へのアプローチApproach to regeneration of seven rare species in Lake Shinji using environmental biomolecules

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