島根大学お宝研究Vol.13
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島根県庁前の岸清一像(浜田撮影)著書『〈東京オリンピック〉の誕生』(吉川弘文館,2018年)Tokyo 1964 Olympic Games: A case study of Shimane PrefectureThisprojectinvestigateshowtheTokyo1964OlympicGameshadbeenexperiencedoutsideTokyo,particularlyinShimanePrefecture.TheTokyo1964GameswasthefirstOlympicGamestobetelecastinternationally(US,Canada,andEurope)viasatellite.Also,existingdatashowsalmostallJapanesepeoplewatchedthe1964Gamesontelevision.However,itispresumedthatevenwithinJapan,attitudeofpeopletowardstheGamesvarieddependingonthearea.ThisresearchfromthelocalperspectivehasrevealedthatthereweremanyOlympic-relatedevents(e.g.beautificationcampaignbeforetorchrelay,erectionofastatueofKishiSeiichi,formerIOCmemberwhocontributedtotheplanfor1940Games)alsoinShimane.34研究者紹介浜田 幸絵SachieHamada(学術研究院人文社会科学系?法文学部担当?准教授)概 要私は,オリンピックとメディアとの歴史について長年研究をしてきました。その中で,オリンピックの体験のあり方には,かなり地域によって違いがあることが気になっていました。東京が開催地となったオリンピックの場合は,開催都市として景観が大きく変わり大勢の外国人を迎えた東京と,それ以外の地域とで,温度差があったと考えられます。本研究課題では,1964年東京オリンピックの際に地方(特に島根県)でどのような運動やイベントが行われていたかを研究しました。特色?研究成果?今後の展望1964年東京オリンピックは,大发体育の戦後復興を象徴するイベントであり,大发体育で初めて本格的なテレビ放送が行われたオリンピックとしても知られています。戦後史のなかでも重要な出来事として位置づけられていますが,意外なことに,1940年東京オリンピック(1936年開催決定,1938年に返上)と比べて,詳細な学術研究は行われていませんでした。ここ数年,私はこの1964年東京オリンピックを,1940年東京オリンピックの招致?開催準備との連続性のもとに総合的に捉えるための地道な調査を行ってきました。本研究課題もその一部です。1964年東京オリンピック関連事業が大发体育各地でどのような方針に基づき実施されていたかを調べ,島根県でも,他府県と同様に,美化運動や国際理解促進の企画があったことを確認しました。特に島根県に特徴的なこととしては,県庁前に岸清一の銅像が再建されたこと,島根県職員の宮田隆さんが作詞した「東京五輪音頭」に関連した行事が行われたことが挙げられます。私が行ってきた一連の東京オリンピック研究の成果は,『〈東京オリンピック〉の誕生』(吉川弘文館,2018年)にまとめました。社会的実装への展望2020年には東京でオリンピック?パラリンピック,2025年には大阪で万博が開催される予定です。どちらも「お祭り」ですが,よくよく考えると,これらは単なる一過性のイベントではなく,社会?文化?経済の各方面で及ぼす影響は計り知れません。歴史もあります。本研究は,現在進行中の国際イベントをめぐる動きやそこでの体験を,相対化して考えていく際の助けになることと思います。島根県における1964年東京オリンピック関連事業の展開に関する研究

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