島根大学お宝研究Vol.13
25/47
?センター長 藤田 恭久YasuhisaFujita(学術研究院理工学系?総合理工学部担当?教授)?研究代表者 礒部 威TakeshiIsobe(学術研究院医学?看護学系?医学部担当?教授)酸化亜鉛ナノ粒子を含む生理食塩水酸化亜鉛ナノ粒子によって癌細胞内に生じた活性酸素(左)添加前,(右)添加後酸化亜鉛ナノ粒子の投与によって培養中の癌細胞が死滅していく様子酸化亜鉛ナノ粒子によってマウスの肺で死滅した癌細胞(赤色)(左)治療無し,(右)治療ありNanotechnology Project Center津端由佳里YukariTsubata(学術研究院医学?看護学系?医学部担当?講師) 天野 芳宏YoshihiroAmano(医学部内科学講座 呼吸器?臨床腫瘍学?医科医員) 谷野 良輔RyousukeTanino(医学部内科学講座 呼吸器?臨床腫瘍学?ポスドク研究員)21研究者紹介概 要酸化亜鉛ZnOは,昔からベビーパウダーや日焼け止めの原材料として,直接肌に塗布する用途に用いられてきた化合物です。一方で,酸化亜鉛には活性酸素を発生する触媒としての機能を持っています。特にナノメートルサイズの粒子に作製された酸化亜鉛ナノ粒子は,バクテリアに対する殺菌作用や,試験管レベルの研究では抗癌作用もあるという事が報告されています。そこで本プロジェクトでは,島根大学の高品質な酸化亜鉛ナノ粒子を作製する技術を用いて,肺癌の中でも悪性度の高い小細胞肺癌に対し,抗癌剤としての酸化亜鉛ナノ粒子という有望な治療薬の可能性を示す結果を培養細胞実験と動物実験から紹介します。Zincoxide(ZnO)isaninorganiccompound,andhasbeenusedformanyyearsinbabypowderandsunscreens.Notably,ZnOnanoparticlesarealsoknowntobeactiveagainstbacteriaandcancercellsin vitroduetoproductionofreactiveoxygenspecies.Inthisstudy,weestablishedanovelproducingmethodforhighqualityZnOnanoparticles,andwefocusedonanticanceractivitiesofZnOnanoparticlesagainstsmall-celllungcancerthatisahighmalignanttypeoflungcancer.HerewereportapotentialtherapyofZnOnanoparticlesforsmall-celllungcancer.特色?研究成果?今後の展望小細胞肺癌は肺癌の中でも死亡率が高く,特に抗癌剤でいったん治療をしても,抗癌剤に耐性を持つ癌が出現することが問題となっています。この為,既存の薬剤が効かない癌に対しても作用する新たなメカニズムを持つ薬が求められています。フラスコで培養した小細胞肺癌の細胞は,培養液に添加された酸化亜鉛ナノ粒子を取り込み細胞障害性抗癌剤としての効果をもたらしました。これは主に癌細胞の中で生じる活性酸素によって生じた抗腫瘍効果であることが分かりました。患者さん由来の小細胞肺癌細胞を使った動物実験を行った結果,マウス肺の中に酸化亜鉛ナノ粒子が移行して,肺の中で増殖していた小細胞肺癌細胞を死滅させる作用が認められました。社会的実装への展望既存の抗癌剤が効かない癌に対して,新たな選択肢となる治療薬として期待できます。新規抗癌剤の候補となる酸化亜鉛ナノ粒子の開発およびヒト小細胞肺癌の同所移植マウスモデルを用いた抗腫瘍効果の検討Development of Anticancer ZnO Nanoparticles and Its Therapeutic Efficacy Against Human Small-Cell Lung Cancer in an Orthotopic Mouse Modelナノテクプロジェクトセンター
元のページ
../index.html#25