お宝研究Vol12
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4内尾 祐司(学術研究院医学?看護学系医学部担当?教授)今出 真司(学術研究院医学?看護学系医学部担当?助教)古屋 諭(島根県産業技術センター?専門研究員)中澤耕一郎(島根県産業技術センター?専門研究員)持田 修司(株式会社オネスト?技術課長)Yuji Uchio (Professor, Academic Assembly Institute of Medicine and Nursing) Shinji Imade (Assistant Professor, Academic Assembly Institute of Medicine and Nursing) Satoshi Furuya (Senior Researcher, Shimane Institute for Industrial technology) Kouichiro Nakazawa (Senior Researcher, Shimane Institute for Industrial technology) Shuji Mochida (Chief of Technology Division, HONEST Co., LTD.)Project Leader : プロジェクトリーダー:研究者紹介概 要特 色研究成果今後の展望社会実装への展望Development of CAM with selective degree of sophistication in processing abilities optimized for medical applications 私たちは手術場で患者さん自身の骨を少しいただき,機械加工してネジなどの固定具を製作し,その患者さんの骨折を治す治療を開発しています。CAMを使って速やかに機械加工をしたいのですが,そこではユーザーが医師であり,かつ制限時間内に処理するという制限が付くことから,多くの機能を有する既存の工業用CAMではかえって過多となり,最適な対応ができません。そこで,機能をスリム化し,医療用に特化したCAMの開発を行いました。 We are developing a novel treatment system for bone fracture by processing the autologous bone of the patient by a machine with a CAM. Bone screws or arbitrarily shaped bone blocks are made by machining the autologous bone at the machining center. Although we would like to do machining speedily by using a CAM, as the users are medical doctors and time is limited, existing highly sophisticated CAM's are not suitable for the medical situation. Therefore we developed a CAM dedicated for the medical application without an excessive degree of sophistication in processing ability. 本研究の特色は,医療用,特に手術場での使用を前提に,機能の絞り込みと操作の簡易性を追求した医療特化型CAMを開発したことです。 CAMとは,コンピュータ上で作成されたある対象物の形状データを入力データとして,加工用プログラム(工具の加工経路)を作成するシステムのことです。NC(数値制御される)工作機械を使用する上でCAMは必須なツールです。私たちは患者さん自身の骨を手術場で加工し骨折を治す新しい治療法を生み出しました。その中心となる機械がまさにNC工作機械であり,開発を継続する上でCAMを手術中に操作する必要性に迫られました。しかし,多くの機能を有する既存の工業用CAMは操作も複雑で,それ以前にNC工作機械を通常運用していない医療現場ではCAMに馴染みがありません。医療では手術時間内に処理を終える必要があり,CAMを応用するには不慣れな医師が扱えるという簡易性も要求されます。そこで,機能を極限まで削ぎ落して処理時間を大幅に短縮し,かつワンクリック操作を基本にインターフェイスを簡略化することで操作性を高めた,すなわち,医療ニーズに合わせた機能を特化した専用のCAMを開発しました。 本研究の成果により,CAM操作を医師自身が手術現場において短時間で行うことが可能となります。具体的には,手術中に採取した形状データをCAMで処理し,NC工作機械を使って骨部材を正確に加工することができます。骨折によっては,破壊が強く元の形に整復しても部分的に隙間が残る場合があり,これを骨欠損といいます。この骨欠損は従来手作業により骨部材を補填してきましたが,精度が低く骨癒合が遅れる原因になっていました。そこで骨欠損部形状を採取し,上述の流れでピッタリ合うように加工した骨部材を作り補填すれば,現状より優れた治療効果を獲得できます。 今後はこの医療用CAMをNC工作機械に実装し,骨折治療支援システムとして運用する予定です。数年後の臨床応用開始を目指し,研究開発を継続しています。 本研究により,医療分野へのNC工作機械応用が期待できます。 本邦の工業技術レベルは高く,他分野転用の可能性を有する技術が多々あります。一方で高度化した機器はその操作に専門性を要するため,他分野へ移転する上で障壁となります。特に医療は使用者や使用環境に著しい制限が付きます。本研究はこうした壁を打破し,医工連携を進める上で核となる要素であり,大きな意義を持ちます。図.医療用CAMをNC工作機械に実装した骨折治療支援システム医療ニーズに合致した処理能力の選択的開発医療用三次元加工機専用CAM(コンピュータ支援製造)開発Development of the dedicated CAM (Computer Aided Manufacturing) for the medical fraise
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