お宝研究Vol12
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1山本 達之(学術研究院農生命科学系生物資源科学部担当?教授)上野 誠(学術研究院環境システム科学系生物資源科学部担当?教授)ヘマンス?ヌータラパティ(学術研究院農生命科学系戦略的研究推進センター?助教)Tatsuyuki Yamamoto (Professor, Academic Assembly Institute of Agricultural and Life Sciences)Makoto Ueno (Professor, Academic Assembly Environmental Systems Science )Hemanth Noothalapati (Assistant Professor, Academic Assembly Institute of Agricultural and Life Sciences)Project Leader : プロジェクトリーダー:研究者紹介概 要特 色研究成果今後の展望社会実装への展望 イネいもち病はイネいもち病菌(Magnaporthe oryzae)がイネに感染することで発症する病害で,イネの収穫に深刻な被害を及ぼしています。この菌は,感染の際に,種々の毒素を代謝産物として産生することが知られています。しかし, 産生される毒素の分子組成, 分子構造等,未解明の部分の多い病害です。未知の毒素の分子構造に関する情報は, この先のイネいもち病対策の進展において, 非常に重要なものであると考えられます。私たちは,イネいもち病菌がガラス表面に付着した直後から, 発芽管を伸長させ付着器が形成されるまで, ラマン分光法に基づいたイメージング測定を行なって, イネいもち病菌が産生する未発見の毒素の分子情報の獲得を目指しています。 Rice Blast disease gives serious damage on the production of rice growing by the infection of rice blast fungus (Magnaporthe oryzae). The fungus is known to produce variety types of toxin, however their molecular composition and molecular structures are still to be resolved. Here in this study, we have performed a Raman imaging study on a living cell of rice blast disease and have tried to follow the process just after the cell attached on the surface of glass plate to obtain the molecular information of the toxins. ラマン分光法は,“分子の指紋”とも呼ばれるラマンスペクトルを測定して,分子構造や分子環境に関する情報を得ることができる低侵襲的な測定手法です。生きた細胞や組織を傷つけることなく,あるがままに測定することができるので,私たちは,この手法を用いて,イネに深刻な被害をもたらすイネいもち病が,イネに感染する過程で毒素が産生され,菌の細胞内で移動する様子などを,可視化しようと考えました。波長の異なる幾つかのレーザ光源を用いて研究を進めた結果,532nmの波長のレーザを用いると,菌の細胞が発する蛍光の妨害を受けることなく,良好なラマンスペクトルを測定することが可能であることが分かりました。現在は,測定した2次元ラマンスペクトルデータに,非負拘束マルチバリエイト法と呼ばれる,行列計算を施すことによって,毒素分子由来のラマンスペクトルを同定して,細胞内における分布や,それらの時間的な変化の様子を可視化することを目指しています。 生きた病原菌が,細胞内で,「どんな毒素を」,「いつ」,「どのくらい」産生するのか,細胞を生かしたまま可視化することができれば,その病気の感染機構を明らかにして,感染を防ぐことができます。私たちは,ラマン分光法によって,そのような研究の推進を目指しています。A Raman Imaging Study for a living cell of Rice Blast fungus by Raman Spectroscopy図1.イネいもち病菌のラマンスペクトル(用いたレーザ波長532nm,強度2mW,露光時間30秒)生きたイネいもち病菌の細胞内分子動態のラマンイメージング法による可視化の試みfor the development of new diagnostic techniques by Raman spectroscopy医療診断応用研究を中心に据えたラマン分光法の医理工農連携研究The collaborated study with medical, scientific, engineering and agricultural fields aiming
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