お宝研究Vol12
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40藤原 純子(学術研究院医学?看護学系医学部担当?講師(学内))Junko Fujihara (Associate Professor, Academic Assembly Institute of Medicine and Nursing)研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望Blood identification and discrimination between human and nonhuman blood using portable Raman spectroscopy 血液の検査は,捜査や裁判上極めて重要で,凶器,着衣,現場の器物などに付着して“血痕”となって発見される例がほとんどです。既存の血痕予備試験法(ロイコマラカイトグリーン法,ルミノール法)は,非特異的反応がみられる,試薬でDNAが分解される等の難点があります。そこで非破壊,非接触で屋外でも分析可能なポータブルラマン分光器を用いて血痕検査と人獣鑑別を試みました。 Raman spectroscopy is a nondestructive analysis and needs no sample preparation. In the present study, blood identification and discrimination between human and nonhuman blood were performed by a portable Raman spectrometer, which can be used at a crime scene. The human bloodstain could be distinguished from the nonhuman ones by using a principal component analysis. The portable Raman spectrometer can be used at a crime scene, and this analysis is useful for forensic examination.  血痕と思われる斑痕(血痕様斑痕)について検査を実施する際の重要なポイントとしては,以下の3点が挙げられます。1)疑問の斑痕が血痕かどうか。2)人の血液か,あるいはイヌやネコなどの動物の血液なのか。3)血液型(ABO式血液型,DNA型など)は何か。 そこで,血痕検査は一般的に①血痕予備試験(スクリーニング)②確認試験③人血か否かの決定(人獣鑑別)④DNA鑑定(図1)の手順で進められます。 ポータブルラマン分光器(図2)を用いて測定を行った各動物種の血液では,血液の主成分のヘモグロビンは1000, 1368, 1542, 1620cm-1に散乱ピークが観察され,血液の識別が可能でした(図3)。これらのピーク強度を用いて主成分分析を行ったところ,ヒト血液とその他の動物種の血液の判別が可能となりました(図4)。ラマン分光法は,非破壊の分析法でDNA鑑定前のスクリーニング法として優れたものであることが示されました。また本方法では,ワンステップで血痕予備試験と人獣鑑別を同時に行うことが可能です。 法医鑑識科学の分野での応用が期待できます。図1.血痕検査の手順図3.ヒト血液のラマンスペクトル図2.ポータブルラマン分光器図4.主成分分析による人獣鑑別遺伝的多型解析およびラマン分光法を組み合わせた高精度な法医鑑識科学的人獣鑑別方法確立に関する研究

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