お宝研究Vol12
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球面の形態(トポロジー)で小さく畳み込まれた余分な次元の空間人間が通常観測する3次元空間19波場 直之(学術研究院理工学系総合理工学部担当?教授)山田 敏史(学術研究院理工学系戦略的研究推進センター担当?特任助教)梅枝 宏之(戦略的研究推進センター?研究員)Naoyuki Haba (Professor, Academic Assembly Institute of Science and Engineering)Toshifumi Yamada (Contract Assistant Professor, Academic Assembly Institute of Science and Engineering) Hiroyuki Umeeda (Researcher, Center for the Promotion of Project Research) センター長:研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望Director :  現代物理学の未解決問題の一つに,strong CP問題があります。これは,原子核やそれを構成する陽子?中性子が,理論上は電荷分布の一方向の偏り(電気双極子モーメント)を持っていても良いはずなのに,そのような偏りが全く見つからないのはなぜか,という問いかけです。実は,strong CP問題は空間の次元の数と関連していて,空間が,人間が通常観測する3次元だけではなく4次元以上ならば,解決できる可能性があります。そこで私たちは,3次元の他に小さく畳み込まれた次元が存在する理論を構築し,その理論において,電荷分布の偏りが無いことが自然に導かれ,strong CP問題が解決されることを明らかにしました。 One of the unsolved problems in moden physics is the strong CP problem. This is a question of why we do not discover any bias of electric charge distribution (electric dipole moment) in nuclei as well as proton and neutron which consitute them, even though we theoretically expect such bias exists. In fact, the stong CP problem is related to the number of space dimensions, and if there are four or higher space dimensions, which are more than the three dimensions people usually observe, then the strong CP problem is possibly solved. On the basis of this fact, we have constructed a theory in which dimensions other than the three are minutely compactified, and revealed that the absence of electric charge distribution bias is naturally derived and the strong CP problem is solved in this theory. Strong CP問題は,現代物理学の未解決問題であり,数多くの素粒子理論研究者がその解決に取り組んできました。近年まで,ペッチャイ?クイン理論と呼ばれる,新たな対称性の存在を仮定する理論がstrong CP問題の解として有力視されていましたが,理論構成に不十分な点があること,また,ペッチャイ?クイン理論が予言するアクシオンと呼ばれる新粒子が全く発見されないことから,これに代わる斬新な理論を探る研究が盛んになっています。私たちは,strong CP問題の起源を追究することで,「空間は3次元である」という暗黙の前提がその原因であることを突き止めました。そこで私たちは,空間が4次元以上の高次元を持つ理論を構築し,その性質を調査しました。もちろん,人間が通常観測する空間は3次元ですので,余分な次元はミクロなスケールで小さく畳み込まれていると考えます。私たちの研究の結果,通常の3次元空間とは別に,球面の形態(トポロジー)に畳み込まれた余分な次元の空間が存在すれば,strong CP問題が予言するような原子核等の電荷分布の偏りが存在しないことが自然に導出され,それゆえstrong CP問題が解決できることが分かりました。現在は,strong CP問題を解決するような高次元が存在することの直接的な証拠を捉えるための理論研究を進めています。 本研究を通じて,strong CP問題が高次元空間の存在によって解決されていることが実証されれば,人間が抱いてきた「空間は3次元である」という常識が覆ることになります。このことは,人々の世界観を一変させ,思想?文化を洗練させることにつながります。Strong CP problem and higher dimensions私たちが研究した高次元理論の模式図Strong CP問題と高次元Higgs and early universe project centerヒッグス?初期宇宙プロジェクトセンター

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