お宝研究Vol12
15/46
11藤村 卓也(学術研究院環境システム科学系総合理工学部担当?助教)水野 斎(学術研究院理工学系総合理工学部担当?助教)Takuya Fujimura (Assistant Professor, Academic Assembly Institute of Environmental Systems Science) Hitoshi Mizuno (Assistant Professor, Academic Assembly Institute of Science and Engineering)Project Leader : プロジェクトリーダー:研究者紹介概 要特 色研究成果今後の展望社会実装への展望 萌芽研究部門「高秩序な分子配列空間を基盤とする新奇光捕集/コヒーレント光発生システム創製プロジェクト」では,分子の配列?配向といった『集合構造』の制御技術の開発と,この集合構造が光学?光化学的物性に及ぼす影響について基礎的な研究を行っています。本研究では分子の集合構造を作るための足場として無機ナノシートを利用し,分子の配向を制御することに成功しました。また,配向が光-励起子相互作用に与える影響について,調査を進めました。 In R&D project on novel light harvesting/coherent light generation system based on high ordered molecular assembly, we develop the control techniques of molecular assemblies” structure, and we investigate effect of the assemble structure on fundamental optical/photochemical properties. In this research, inorganic nano-sheet was utilized as “field” to construct the molecular assemblies, and it is succeeded to control of the orientation of the dyes in the film. Obtained film was used to investigate the effect of dye orientation on the Photon-exciton coupling. 二枚の鏡で活性層と呼ばれる発光部位を挟んだマイクロキャビティ中(図1)では,光と励起子(光を吸収した分子)が強く相互作用したキャビティポラリトンという準粒子が生成されます。これらは新たなレーザー発振媒体や次世代量子情報通信用光デバイスの動作原理として期待されています。 キャビティ中に閉じ込められた光は分子に吸収され,再度光として放出されます(発光)。放出された光は「吸収→放出」を繰り返し,活性層中を伝わっていきます。これらが効率的に繰り返されれば,より強い光-励起子相互作用が期待できます。一方,活性層中の分子は光を吸収できる向き(配向)は決まっており,どの向きでも光を吸収できるわけではありません。しかし,既存の手法では活性層中の分子の向きを制御するのは難しく,ランダムな状態がほとんどでした。 我々はこの活性層中の分子の向きに着目し,これを揃えることでより強い光-励起子相互作用が実現できるのではないかと考えました。分子の向きを揃えるために無機ナノシート(厚みが1nm程度の薄いシート状化合物)が積層した薄膜を作製し,これを活性層の母体としました。このナノシート間に分子を挿入することで,活性層中の分子の向きをある程度制御することに成功しました(図2)。結果として,この無機ナノシート-分子複合体を活性層とするマイクロキャビティ中では比較的強い光-励起子相互作用が観測されることがわかりました。これは無機ナノシートを母体とした活性層の作製に成功し,キャビティポラリトンを観測した初めての例です。また活性層の作製手法は色素と無機ナノシートの分散液を混合し,ろ過するという非常に簡便な手法であり,高い汎用性が期待できます。今後は光-励起子相互作用の強さと分子配向の関係性などを調査し,レーザー発振などの応用を目指します。 レーザー発振媒体や次世代量子情報通信用光デバイスの動作原理として期待されています。Control of Photon-exciton coupling in micro-cavity utilizing inorganic nanosheet-dye hybrid film図1. マイクロキャビティ の概略図2. 無機ナノシートを用いたマイクロキャビティのイメージ図色素/層状化合物複合体薄膜を活性層としたマイクロキャビティ中における光子-励起子相互作用の制御高秩序な分子配列空間を基盤とする新奇光捕集/コヒーレント光発生システム創生プロジェクト R&D project on novel light harvesting/coherent light generation system based on high ordered molecular assembly
元のページ
../index.html#15