お宝研究Vol12
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7高原 輝彦(学術研究院農生命科学系生物資源科学部担当?助教)秋吉 英雄(学術研究院農生命科学系生物資源科学部担当?准教授)吉田 真明(学術研究院農生命科学系生物資源科学部担当?准教授)Teruhiko Takahara (Assistant Professor, Academic Assembly Institute of Agricultural and Life Sciences) Hideo Akiyoshi (Associate Professor, Academic Assembly Institute of Agricultural and Life Sciences)Masa-aki Yoshida (Associate Professor, Academic Assembly Institute of Agricultural and Life Sciences)Project Leader : プロジェクトリーダー:研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望Using environmental DNA, distribution estimation of Japanese eel (Anguilla japonica) in Lakes Shinji-Nakaumi ニホンウナギは,大发体育人にとって伝統的かつ馴染みの深い重要水産資源です。しかし近年では,漁獲量の激減や国際自然保護連合(IUCN)による絶滅危惧種への指定により,効果的な保全活動と資源管理は喫緊の課題となっています。そこで本プロジェクトでは,島根県内の汽水環境を調査フィールドとして,革新的な生物モニタリング手法である”環境DNA分析手法”を用いて,本種の生息に適した沿岸環境の解明を試みてきました。そしてこれまでに,主に宍道湖-中海に生息するウナギの選好する場所やその環境条件について明らかにすることができました。今後は,これらの成果を島根県の安定的な漁獲資源管理に活用できるようにしていきたいと考えています。 Japanese eel (Anguilla japonica) is an important fishery resource traditionally familiar to the Japanese. However, in recent years, effective conservation and resource management of this species are urgent because extinction is a concern. Therefore, in this project, we tried to elucidate the traits of habitats and distribution of this species in Shimane, using environmental DNA methods. As a result, we were able to clarify the habitat preferences of this species in Lakes Shinji-Nakaumi. In future, we would like to utilize it for the development of stable fishery management in Shimane. “環境DNA分析手法”とは,目視や採捕を必要とせず,採水のみの現場作業によって,わずかな水サンプルに含まれるDNAを調べて対象動物の生息状況を簡便に推定できる生物モニタリング手法であり,広域調査が短時間で容易に実現できます。本プロジェクトは環境DNA分析手法を用いることで,島根県内の汽水環境においてニホンウナギの分布?生態の解明を試みた,独自性と特色をもっています。これまでに,ニホンウナギのDNAのみを測定できるプライマー?プローブを開発した後,宍道湖-中海における計14地点で,2年間の毎月採水調査を行い,水サンプルに含まれる本種のDNA濃度を調べました。その結果,宍道湖?中海それぞれの西岸付近がDNA濃度が高かったことからウナギの選好場所と推測されました。また,2年間を通して各調査場所で環境DNA濃度の濃淡に季節的な傾向がみられたことから,環境DNA濃度の変化はウナギの季節的な移動を反映していると考えられました。さらに,本種は,巨礫のような隠れ家で餌生物が豊富な沿岸域を選好しており,両湖で好適な塩分環境がそれぞれ存在する可能性も明らかにできました。今後は,野外調査を継続するとともに,ニホンウナギが選好する場所の優先的な保全のための対策などを考案していきたいと考えています。 本研究成果により,安定的な漁獲資源確保による養殖業などへの展開,汽水ウナギの島根ブランド化など,地場産業を活気づける起爆剤になることを期待しています。シラスウナギ遡上に関する環境DNA調査風景環境DNAを用いた宍道湖-中海におけるニホンウナギの分布推定Ecological research and resource utilization for Japanese eel in Shimane using environmental DNA環境DNAを用いた汽水域に棲息するニホンウナギの生態解明および利活用

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