お宝研究vol.11
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1片岡 祐介(総合理工学研究科?助教)半田 真(総合理工学研究科?教授)Yusuke Kataoka (Assistant Professor, Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering)Makoto Handa (Professor, Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering)研究代表者:グループ紹介概 要特 色研究成果今後の展望社会実装への展望Leader : Development of phosphorescent cyclometalated iridium complexes obtained via post-synthetic modifi cation 重点研究部門「島根大学のシーズを活かした学際的新規医療技術開発拠点の確立」では,新規医療技術の開発を目指した基礎研究及び応用研究が多数実施されています。我々の研究グループでは,基礎研究の立場から,「特異な細胞だけを明るく光らせる試薬」や「光と酸素を使用することで高効率に細胞を光分解させることが可能な試薬」の開発を目指した研究を推進してきました。その成果として,極めて長寿命な燐光発光寿命を有するシクロメタレート型イリジウム錯体の新たな合成経路を確立し,多数の新規試薬を開発することに成功しました。 Our research group has been engaged in developing reagents which work only on specific target cells by giving them light-emission properties or reagents which provide an efficient tool for photodecomposition of cells through usage of light and oxygen by producing photo excited oxygen. Recently, we succeeded in establishing a new synthetic pathway to obtain cyclometalated iridium complexes with a very long phosphorescence lifetime; such synthetic studies are utilized to develop other new functional materials. 私達が注目したシクロメタレート型イリジウム錯体は,「燐光」と呼ばれる蛍光よりも長寿命な発光を行うことで知られており,太陽電池や有機発光ダイオードの色素(光増感剤)として期待されている物質です。 本物質は,光照射下で空気中の酸素(三重項酸素)を活性酸素(一重項酸素)へと高効率に変換することが可能であるため,上記の様な医療応用に向けた試薬として使用できるのではないかと考えました。しかし,これらの試薬の従来の合成法は,配位子と呼ばれる有機化合物を合成した後に,イリジウムイオン(またはイリジウム錯体)と反応させる多段階の合成経路を必要とするため,医療応用に向けたハイスループットな研究開発には不向きでありました。そこで私達の研究グループでは,目的の機能性を持つ置換基を自由自在に導入でき,且つ,ハイスループットにシクロメタレート型イリジウム錯体を合成することが可能な合成経路を確立することを目指しました。その結果,図1に示す様な,既存の合成経路とは真逆の順番(錯体合成→有機合成)に合成を行うことで,ハイスループットにシクロメタレート型イリジウム錯体を合成可能であることが明らかになりました。この逆転の発想に基づく合成手法には,2010年のノーベル化学賞で知られる「鈴木カップリング反応」を使用しております。 太陽電池や人工光合成反応における光増感剤,有害金属センサー,または細胞染色の色素としての応用に期待が持てます。重点研究部門合成後修飾法による燐光発光性シクロメタレート型イリジウム錯体の開発島根大学のシーズを活かした学際的新規医療技術開発拠点の確立Establishiment of a cross-disciplinary hub center to develop unique medical technologies
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