お宝研究vol.11
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32有田 洋子(教育学部?准教授)Yoko Arita(Associate Professor, Faculty of Education)研究者紹介概 要特 色研究成果今後の展望社会実装への展望 現在,美術教育学は美術の専門研究とは別な独自性をもつ学問領域ですが,それが認められるようになったのは最近のことです。しかも学会等の活動からではなく政策によって教員養成大学?学部で専門研究者の位置が制度的に三段階を経て確立した,つまり美術教育学のインフラ整備がされたことを,全国の大学の資料を調査して実証的に明らかにしました。 It is only recently that science of art education has been recognized as a discipline with its own academic fi eld other than the professional study of art. I made it clear that the institutional position of professional art-education scientists at a teacher’s college/department was established through educational policy, not by academic activities, via three process stages. Materials from colleges all over the country verified that infrastructural improvement of art-education studies was carried out.[特色] 美術教育学の制度的?人的整備を美術教育学のインフラ整備として捉える点と,全国の教員養成大学?学部を網羅的に調査した内容を表として可視化した点が特色です。[研究成果] 教員養成大学?学部における美術教育学の人的制度と人材配置は,1.師範学校から教員養成大学?学部への転換,2.学科目制度の発足,3.大学院美術教育専攻?専修(以下,専攻と便宜的に表記)の設置という三段階で確立しました。この三時期の様相は大学によって様々なので,各大学のケースを解明し,以下のように全体像を解明しました。(1) 師範学校から教員養成大学?学部への美術関係教官の移行:美術教官の場合,一般教官と違って大学への移行は比較的問題なく認められたようです。当時,制度的に美術教育学の専門性は未だ保証されず,教官の美術教育学への意識も薄かったことがわかりました。(2) 学科目の設置と具体的人員の配置:学科目「美術科教育」が昭和39年から昭和末頃まで様々な時期に各大学に設置され,教官が配置されていきます。まだ「美術科教育」所属教官はその専門家ではない場合もありました。美術教育学の専門性は未確立と言えます。(3) 大学院美術教育専攻の設置と展開(人員の配置):大学院美術教育専攻は,昭和43年の東京学芸大学を皮切りに設置されていき,平成2年から設置数が急増します(表1?図1)。そして平成11年の弘前大学を最後に美術教育学の制度的基盤は成立したと言えます。[今後の展望] 解明した全国大学のケースを総合して類型化を試み,個々のケースだけでは見えにくい教育政策の展開を明らかにできると考えています。例えば,平成2年から急に大学院美術教育専攻の設置数が増え,教育政策が転換しています(図1)。現在も美術教育学は,教育政策や社会の変化に影響されています。美術教育学の制度的基盤成立の意味をしっかりと解明しておきたいと思っています。 美術教員養成システムを構想するにあたって,堅実な基礎データを提供できます。Historical Research on Establishment of the Institutional Basis of Art Education in the Teacher's College/Department表1 大学院美術教育専攻の設置順 図1 大学院美術教育専攻設置数の変遷教員養成大学?学部の美術教育学の制度的基盤の成立過程教育学部
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