お宝研究vol.11
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11藤村 卓也(総合理工学研究科?助教)水野 斎(総合理工学研究科?助教)Takuya Fujimura (Assistant Professor, Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering) Hitoshi Mizuno (Assistant Professor, Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering)研究代表者:グループ紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望Leader :  再生可能エネルギーとして期待されている光エネルギーを用いている代表的な例として,植物の光合成反応が挙げられます。植物中には光捕集系と呼ばれる器官が存在し,光のエネルギーを吸収?伝達?集約しています。この光捕集系を人工的に構築しようという試みは,近年盛んに行われています。我々のプロジェクトでは格段に広い人工光捕集系の構築に向け,現在多くの研究で用いられている機構とは異なる,キャビティポラリトンを媒介とする方法を考えています(図1)。キャビティポラリトンとは,キャビティ内に閉じ込められた光子と励起子の複合準粒子です。我々は,光キャビティの活性媒質である有機分子集合体の厚み,次元性,分子配列方向や会合状態を精密に制御し,これらがキャビティポラリトンの形成や励起子―光子相互作用の大きさといった光物性に及ぼす影響について研究をしています。 Photosynthesis of plants is one of the representative examples of utilization of solar energy which is a promising renewable clean energy source. Solar energy is adsorbed, transferred and concentrated by light harvesting system via energy transfer reaction. For the construction of the artifi cial light harvesting system which can collect light energy from a wide area, we are focusing on the energy transfer reaction mediated by the cavity-polariton, a compound quasi-particle composed of the photon and the exciton confi ned in a cavity, which is diff erent from the F?rster mechanism. We are trying to reveal the eff ects of the molecular assemblies on the polariton-mediated energy transfer reactions inside the metal mirror micro-cavities.【特色,研究成果及び今後の展望】 これまでの有機マイクロキャビティに関する研究は,有機色素J会合体をポリマー膜中に分散させたものや単結晶を活性層に用いたものが主です。J会合体分散膜は,それぞれの会合体の向きはランダムであるため,光との結合を強くすることが困難です。また,有機単結晶を用いた場合では,高い異方性が得られますが,分子種によって分子間距離や結晶構造が決まっているため,自由に制御できない点が課題となっています。しかし,今回我々が提案するのは,無機層状化合物(ナノシート)の種類を変えることで,層間に挿入する分子間の距離,次元性,配向や会合状態を制御することができるため,励起子-光子相互作用の大きさを自由に制御できるという大きな利点を有しています。それゆえ,高い異方性及び指向性を持ったこれまでにない高機能なコヒーレント光源が実現できると考えています。 有機分子集合体をポリマー膜中に分散させたものを活性層に用いたマイクロキャビティの光学特性を調べた結果,約300 meVの大きなラビ分裂エネルギー(励起子―光子相互作用の大きさの目安)が得られました。今後は,ナノシートの層間に有機分子を挿入し,配向や会合状態を制御した薄膜を活性層に用いたキャビティを作製し,キャビティポラリトンの光学特性を評価する予定です。ポリマー膜中に分散させたものと比べて大きなラビ分裂エネルギーが得られれば,分子レベルで高度に構造制御された新規なコヒーレント光源となり得ると期待されます。また,異なる分子種の集合体を活性層内に配置し,キャビティポラリトンを媒介としたエネルギー移動反応を実現することができれば,従来よりも格段に広い人工捕集系が構築できます。 本プロジェクトにより,量子情報通信用光デバイス等の次世代有機デバイス実現や,人工光捕集系の実現による太陽電池などの光-エネルギー変換デバイスの高効率化が期待できます。図1. F?rster型とキャビティポラリトンを利用したエネルギー移動を示す模式図.高秩序な分子配列空間を基盤とする新奇光捕集/コヒーレント光発生システム創生プロジェクトR&D project on novel light harvesting/coherent light generation system based on highly ordered molecular assembly space

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