お宝研究vol.11
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7高原 輝彦(生物資源科学部?助教)秋吉 英雄(生物資源科学部?准教授)吉田 真明(生物資源科学部?特任准教授)Teruhiko Takahara (Assistant Professor, Faculty of Life and Environmental Science)Hideo Akiyoshi (Associate Professor, Faculty of Life and Environmental Science)Masa-aki Yoshida (Specially Appointed Associate Professor, Faculty of Life and Environmental Science)研究代表者:グループ紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望Leader :  ニホンウナギ(Anguilla japonica)は,大发体育人にとって伝統的かつ馴染みの深い重要水産資源です。しかし近年では,漁獲量の激減や国際自然保護連合(IUCN)による絶滅危惧種への指定により,効果的な保全活動と資源管理はますます喫緊の課題となっています。そのために本プロジェクトでは,島根県内の汽水環境を調査フィールドとして,環境DNA分析(目視や採捕を必要とせず,現場の水1Lに含まれる残留DNAの遺伝情報を調べることで対象動物の生息状況を簡単に推定できる方法)を用いて,本種の生息に適した河川?沿岸環境を解明したいと考えています。 It is necessary to monitor the distribution and biomass of endangered species to conserve the rare and important resources like Japanese eels in natural habitats. Here, we develop the environmental DNA (eDNA) method by which the habitat density of a species can be estimated from the amount of residual DNA's in a unit volume of environmental water without having to collect target organisms. By using the eDNA method, we survey the distribution of the Japanese eel, Anguilla japonica in Shinji Lake, Nakaumi Sea, and Oki islands, in Shimane prefecture.【特色と研究成果】 本プロジェクトは採水のみの現場作業によって,広域調査が短時間で容易に実現できる“環境DNA分析”を用いて,ウナギの分布?生態調査に応用する点が,とくにユニークな取り組みと考えています。宍道湖?中海を中心とした,毎月の定点調査(水サンプルの採取)を行った結果,宍道湖のウナギにおいて,湖内における分布域は偏在し,季節性の変化(ウナギの移動)があることがわかってきました。同様の手法を用いて,中海および島根県内の各地域において調査を行うとともに,地域の活性化を念頭においた研究?開発活動を推し進めていく予定です。【今後の展望】 地域自治体の研究機関や漁協?水産業界との共同研究へ発展させることを模索し,本研究成果が安定的な漁獲資源確保による養殖業などへの展開,汽水ウナギの島根ブランド化など,地場産業を活気づける起爆剤になることを期待しています。本プロジェクトは,ニホンウナギの生態研究の絶好のフィールドである汽水域を有する島根県でこそ綿密な調査?研究の実施が可能であり,今後,更なる学際的な研究プロジェクトへの発展を目指しています。 ウナギの好適生息地の解明によって,優先して保全すべき環境を提案し,ひいては,県内の漁獲資源の安定的確保に係る施策の立案に寄与できると考えています。 現場での目視調査と採水調査の風景環境DNAを用いた汽水域に棲息するニホンウナギの生態解明および利活用Ecological research on and resource utilization of Japanese eels living in brackish water in Shimane using environmental DNA

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